2014年7月2日水曜日

農産物が危ない!〜構造問題を理解する〜 その1

  日本の農業と農産物について、もう一度考えてみたい。政府や評論家、メディアのいずれも本質を掴んでおらずお寂しいばかりだ。議論、評価に目的も感じ取れない。


産業、雇用、食料問題、技術などの目で農業と農産物の問題に取組むには、環境、土壌、生物学、微生物学、栄養学(エネルギー代謝)、遺伝学、物理、化学、経済、マーケティングなど幅広い知識、技術を伴う必要がある。生物多様性の概念も必要だ。



それに対し、政府、農水、企業、メディア、大学までもが俯瞰的に見ることができず、断片的な情報を流すため、国民に間違った理解をさせるに至っている。


そこで、日本における農業の環境と土壌、技術、資材とコスト、作物の栄養価、規制、流通論理と価格、需給と生産利益、構造から問題を紐解いてみたい。



1.まず、環境と土壌だが、日本は水は豊かなのだが、火山性土壌が多く、全土的に見ても酸性土壌が目立ち、湿度も高いことなどから、決して農業に向いているとは言えない。

ミネラルのバランスも悪い場所が多く、逆にミネラルが多い場所は供給過多となり、カドミウム米などが良い例どある。特に、間違ったブランド化となっている「有機」は日本にはマッチせず、有機栽培をすればするほど、土壌中の硝酸態窒素が残留し品質、収量に影響が出て連作障害にも繋がり、作物の栄養価も低下する。


2.日本の農業技術は世界一だと誰が言ったのだろう?90年代後半になりはじめて有機農業の学会がドイツなど有機農法(正確には生物多様性から見た農産物の生育に必要な物質の循環とエネルギー代謝)のあり方を日本に紹介した程度である。これまでは、科学的に取り組んで来なかった農業従事者、大学、政府の怠慢と言うしかない状況だ。

但し、悪い土壌環境下で、品種改良など美味しい作物を開発してきた技術は世界一である。欲しいのは、量産と生育コントロール技術なのだが、実は存在している。利用されていないのである。


3.上記の環境とメカニズムを把握し正確な処置をすべきだが、それを無視(無理解)した無駄な資材を使い、その悪影響をさらに他の資材で埋め合わせるため、当然コストは高くなる。

また、量産技術には運用上の生産効率と植物の限界収量向上のふたつがあるが、需要が落ちる日本語は農地も減り前者的には不利となり、後者の必要がないため技術力が育たないのが現実だ。


4.作物の栄養価を正確に論じる専門家はさらに少ない。昔より味は向上しているが、品質はどうであろう?

最初に言っておくが、作物の栄養価と品質はイコールであることを覚えておくべきだ。

土壌環境が悪く、必要なミネラル、生理活性物質に欠ける日本の作物は、全判的に見て、本来含有するたんぱく質やビタミン、ミネラル、それに植物性栄養素(ポリフェノール、カロテノイドなど)が圧倒的に少ない。

対して、米国のユタ、オレゴンあたりは、土壌のミネラルが豊富であり微生物コロニーも最適化され、作物の栄養素は抜群である。故に、サプリメントの産地でもあり、オリンピック選手は栄養を摂るため滞在する期間が長い。日本の野菜ではメダルは取れないのである。

野菜の品質とは何だろう?と聞くと、専門家ですら一様に新鮮さだと言う。論理的に考えられないのか?

簡単に言うと、鮮度保持能力があるかどうかだ。残念ながら日本のスーパーに陳列する野菜は全滅であろう。食べない方が良いものも多い。

例えば、スーパーで買った野菜を冷蔵庫の野菜室で何日日持ちするのだろう?一度やって見て欲しい。れたす

などは数日も持たないはずだ。上述の植物性栄養素(ファイトケミカル)が少ないからだ。ちなみに、私達が栽培、するピーマンの日持ちは一ヶ月、桃は数ヶ月以上、ベビーリーフは一週間以上だ。香りから違う。かと言って決して高いものではない。必要な物を与え強く生きているだけなのだが。


5.規制は言うに及ばず、土地利用、有機栽培規制などくだらないものばかりだ。


6.流通論理と価格が問題である。本来の価値(鮮度保持力)を加味しない今の価値判断でのセリ(市場)では、その日その日の非常に狭い範囲、取り扱い高の受給バランスだけで価格が決まってしまう。年末のレタスの高騰は年賀の混雑よろしく毎度のイベント化している。こんな状況すら変えられないのだ。つまり、変える構造、論理になっていないのだ。投機筋にも門戸を開きさらに悪い状況となる。海外からの大豆、小麦、トウモロコシが良い例だ。商社の利益も想像できる。

我々は、国産でも今の三倍の収量を確保できる技術を広めているが、業者はどうしても儲かる方へ流れてしまう。これでは日本の穀物は消滅するだろう。


7.需給と生産利益も上記と深い関係にある。

毎年、品不足となる時期があるが面白い現象が頻繁に起こる。それは、確かに一時的に品が少なくなるのだが、全くなくなるわけではない。高速道路の渋滞と同じで各所にボトルネックができる程度なのだ。その証拠に品薄時期でも余って捨てているところもある。

品薄時期は農家にも多少実入りは増えるだろうが、すぐに逆転するため収入が減るケースが多い。いつも儲かるのは、仲買人と流通であろう。もっとも、スーパーも最近は利益が出ていないらしい。


8.そうであれば、JAが生産者と密に生産調整し、需給バランスを図り、一定の利益と価格を維持し、そこに多少の政府補助金を当て、スーパーは間貸で薄利を取り、JAが市場(いちば)を通さず、生産者と共に直接販売する。

これこそが構造改革と言うものであろう。


第二部は、これらの対策について考える。


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